イギリスやフランスの蚤の市、古いものが並ぶ静かな空間で、ふと目に留まる星のモチーフ。それは家具の片隅に彫られていたり、あるいはアクセサリーの上で控えめに輝いていたりします。
なぜ私たちは、これほどまでに星の形に心を惹きつけられるのでしょうか。
この記事では、アンティークの品々に刻まれた星のモチーフに秘められた、時を超えた物語を紐解いていきます。
星のシンボル「☆」の歴史
私たちが当たり前のように使う「☆」のマーク。その起源は、はるか古代まで遡ります。古代メソポタミア文明では、星は神々や天体の象徴として、神聖なものと考えられていました。
特に五つの角を持つ五芒星(ごぼうせい)(ペンタグラム)は、多くの文化で特別な意味を持っていました。古代ギリシャでは健康や完全性の象徴とされ、中世ヨーロッパでは魔除けや幸運を呼ぶシンボルとして、建物の装飾や護符に用いられました。
キリスト教の世界では、星は「希望」や「導き」の象徴です。新約聖書に登場する「ベツレヘムの星」が、東方の三博士をイエス・キリストの誕生へと導いた物語は有名です。このことから、星は暗闇を照らす神聖な光として、多くの人々の心の支えとなってきました。



なぜ人は「☆」模様を好むのか?
星のモチーフがこれほどまでに愛されるのには、心理的な理由と、その形が持つ普遍的な美しさがあります。
まず、星は「希望」や「夢」の象徴です。「一番星に願いをかける」という習慣があるように、私たちは夜空に輝く星にポジティブなイメージを託してきました。また、かつて旅人たちが北極星を目印にしたように、「目標」や「道しるべ」といった意味合いも持っています。
そして、その形自体の美しさも魅力です。暗闇の中にきらりと光る一点の輝きは、私たちの根源的な感性に訴えかけます。左右対称の整った幾何学的な形は、見ていて心地よく、安心感を与えてくれます。
イギリス・フランスのアンティークに見る星モチーフ
それでは、実際にアンティークの世界で星たちがどんな風に輝いているのか見てみましょう。
【イギリス】 18世紀のジョージアン時代や19世紀のヴィクトリアン時代の家具には、星のモチーフがしばしば見られます。特に、異なる色の木材をはめ込んで模様を作る「象嵌(マーケトリー)」という技法で、星が精巧に表現されていることがあります。これらは、持ち主の社会的地位や品格、そして古典的な美意識を象徴していました。
【フランス】 フランスのアンティークでは、よりパーソナルなアイテムに星が輝いているようです。アール・ヌーヴォーやアール・デコ時代のブローチやペンダントには、優雅な曲線やシャープな直線と組み合わされた、デザイン性の高い星が見られます。また、古い手紙を閉じるためのシーリングスタンプ(封蝋)に、幸運のお守りとして星が刻まれていることもあります。大切な人へのメッセージに、星の輝きを添えたのかもしれません。



まとめ
アンティークの品々に刻まれた星は、単なる美しい装飾ではありません。 そこには、持ち主の願いや、その時代を生きた人々の価値観、そして夜空を見上げてきた私たちの普遍的な想いが、静かに込められています。
次にアンティークショップを訪れた際には、ぜひ小さな星のモチーフを探してみてください。 その星は、あなたにどんな物語を語りかけてくれるでしょうか。きっと、あなただけの特別な出会いが待っているはずです。