アンティークの世界で出会う、どこか優雅で異国情緒をまとった装飾。
竹を模した座面の家具、
東洋風の人物や風景が描かれた陶器、
黒地に金彩の家具や雑貨。
それらは「シノワズリ」と呼ばれる、
18世紀、ヨーロッパで花開いた中国(と東洋全体)趣味の装飾様式です。
そして実は――
イギリスはこのシノワズリ文化の中心地のひとつでした。
東インド会社が運んだ“憧れ”
イギリスに東洋の美術品をもたらしたのは、1600年創設の 東インド会社 です。
中国や日本から運ばれた磁器や漆器は、当時の英国上流階級にとってまさに宝物でした。
特に中国磁器は“ホワイト・ゴールド(白い黄金)”と呼ばれ、貴族の邸宅では専用のチャイナルームが設けられるほど。
この東洋への熱狂が、英国独自のシノワズリを育てていきます。
庭園に現れた中国趣味
建築や庭園にも、その影響は及びました。
ロンドン郊外のキューガーデンに建てられたグレート・パゴダは、中国風建築を模した象徴的存在です。
設計したのは建築家ウィリアム・チェンバース 。
彼は実際に中国を訪れた数少ない英国人のひとりで、その体験をもとに“中国趣味”を英国庭園に取り入れました。
ここに見られるのは、本物そのものではなく、英国のフィルターを通した理想の東洋です。
英国陶磁器とシノワズリ
東洋磁器への憧れは、英国の陶磁器産業を大きく発展させました。
代表的なのがスポード の「ブルーイタリアン」。
一見イタリア風景ですが、構図や装飾には中国磁器の影響が色濃く見られます。
また、
ウスターやミントンなども東洋風モチーフを積極的に取り入れました。
英国のシノワズリは、どこか落ち着きと実用性を備えているのが特徴です。
華やかすぎず、ティータイムの空間に自然と溶け込む。
ここがフランスとは少し違うところかもしれません。
家具に見る英国らしい解釈
イギリスアンティークの世界では、
- 竹を模した“バンブースタイル”家具
- 黒地に金彩のジャパニング仕上げ
- 中国風の透かし彫り装飾
などが見られます。
特に“ジャパニング”と呼ばれる漆風塗装は、日本や中国の漆器を模した英国独自の技法。
堅牢な英国家具に、東洋的な装飾が重なることで生まれる品格ある異国感。
それが英国シノワズリの魅力です。



なぜ英国で花開いたのか?
イギリスは海洋国家。
交易で世界と繋がっていたからこそ、異文化への関心が自然に高まりました。
けれど英国人の気質は、華美さよりもバランスと実用性を重んじます。
そのため英国のシノワズリは、
✔ 控えめで
✔ 生活に溶け込み
✔ ティー文化と調和する
そんな形で発展していきました。
今の暮らしに取り入れるなら
イギリスアンティークのシノワズリは、現代の住空間にも取り入れやすいのが魅力です。
例えば、
・ブルー&ホワイトのプレートを壁に飾る
・バンブーチェアを1脚だけアクセントに
・黒×金の小さなキャビネットを置く
それだけで、空間に“旅の気配”が生まれます。
派手に主張しないのに、確かな存在感を持つ。
まさに英国らしい東洋趣味です。
まとめ
英国のシノワズリは、
交易から生まれ、
紅茶文化とともに育ち、
生活の中で洗練された東洋趣味。
アンティークの器や家具の奥に、
そんな歴史の物語を感じていただけたら嬉しいです。

