European Antiques Stories.

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壁に飾られた一枚の物語:ヨーロッパの「皿を飾る文化」の歴史

壁に飾られた一枚の物語──ヨーロッパの「皿を飾る文化」の歴史 食器・カトラリー
壁に飾られた一枚の物語──ヨーロッパの「皿を飾る文化」の歴史

ヨーロッパの古い邸宅やカントリーハウスを訪れると、ふと目に入るのが壁に並べられた美しい皿たち。その姿は、まるでアートピースのように空間に彩りを与え、そこに住まう人々の美意識や物語を静かに語りかけてくれます。
ではなぜ、皿は「飾るもの」としても大切にされてきたのでしょうか?

起源はルネサンス期から

皿を飾る習慣は、16世紀のルネサンス期のイタリアに端を発すると言われています。この時代、マヨリカ焼きと呼ばれる色鮮やかな絵付け陶器が上流階級の間で流行し、美術品として壁に飾られるようになりました。皿は単なる日用品から、美を愛でる対象へと昇華していったのです。

北ヨーロッパにも広がった「装飾皿」

この文化はやがてフランス、イギリス、オランダなど北ヨーロッパにも波及します。フランスのサルグミンヌやジアン、イギリスのウェッジウッドやスポードなど各地の窯元が、美しい図柄や風景画を皿に施し、「見せる器」としての魅力を競い合いました。

特に18〜19世紀の上流家庭では、食器棚(ドレッサー)に皿を立てて並べたり、壁に均等な間隔で飾ったりするのが主流に。これは家の格式や教養、財力を示す方法でもありました。

飾ることで暮らしに詩を添える

やがてその習慣は、農村部のカントリーライフにも根づいていきます。フランスのプロヴァンス地方やイギリスのコッツウォルズなどでは、素朴で愛らしい皿が壁に掛けられ、日々の暮らしに彩りを添える存在に。皿を飾るという行為は、手に入れた美しい器を大切にし、日々の生活の中で愉しむ心の余裕の表れともいえるでしょう。

現代に受け継がれる「飾る美学」

現在でも、ヴィンテージやアンティークの皿を壁に飾るスタイルは、ヨーロッパだけでなく日本のナチュラルインテリアやシャビーシックな空間づくりにも人気です。お気に入りの1枚を玄関やキッチンに飾るだけで、そこに小さな物語が生まれ、空間全体が優しく、温もりある印象になります。

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